「適応障害で休職するけど、傷病手当金って受給できるの?」
「申請に必要な書類や手続きがよくわからない」
「休職中に生活費が支払えるのか心配」
適応障害と診断され休職を検討している方の中には、このような悩みを抱えている方がいるのではないでしょうか。
適応障害で休職する場合、一定の条件を満たせば傷病手当金の受給が可能です。
元ハロワ職員<br>阿部本記事では、適応障害で休職した場合の傷病手当金を受給できる条件や申請方法、メリット・デメリットのほか支給額や支給される期間を詳しく解説します。
適応障害で休職される際に傷病手当金の受給を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
なお、「転職×退職のサポート窓口」では、傷病手当金の受給に関する情報や個別相談を行っています。まずはLINEでお気軽にお問い合わせください。

【結論】適応障害による休職で傷病手当金は受給できる!
傷病手当金は、病気や怪我などの理由により働けず、会社から給与が支払われない方の生活を保障するために設けられています。
適応障害で休職する場合、以下の条件を満たせば傷病手当金の受給が可能です。
- 業務外の病気や怪我により休職状態である
- 病気や怪我を理由に就業が困難である
- 連続する3日間を含む4日以上、休職している
- 休職期間中に給与の支払いがない状態である
精神疾患の一つである適応障害も、受給の対象となります。ただし、会社から休業補償を受けている場合、受給対象外です。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
なお、適応障害で退職を検討している場合、以下の記事も参考にしてください。退職の際の注意点や手続きを解説しています。

適応障害でも傷病手当金を受給できない5つのケース
適応障害でも傷病手当金を受給できないケースは以下の5つです。
- 給料をもらっている場合
- 支給期間が過ぎている場合
- 休業補償給付を受けている場合
- 国民健康保険に加入している場合
- 障害厚生年金か障害手当金を受給している場合
傷病手当金の受給には一定の条件があるため、自分が該当するかどうかを確認するのが大切です。
給料をもらっている場合
休職中に会社から給料が支払われていると傷病手当金は支給対象外です。傷病手当金の受給条件に「休業期間中に給与の支払いがないこと」が含まれているためです。ただし、給与が傷病手当金よりも少ない場合は、その差額分が支給されるケースもあります。
会社の休職制度や給与規定を確認し、傷病手当金の受給可否を判断しましょう。
支給期間が過ぎている場合
傷病手当金には「同じ疾患での支給期間」が1年6ヵ月と定められており、支給開始日から1年6ヵ月の間に取得した休職期間の合計が基準となります。一度治癒したと医師や会社に認められた場合、その後の再発は別の疾患として扱われ、期間カウントがリセットされます。
このため、支給期間の上限を把握し、計画的に休職期間を設定するのが重要です。
休業補償給付を受けている場合
業務中や通勤中の出来事による病気や怪我が原因の場合、労災保険から休業補償給付が支払われますが、この給付を受けている間は傷病手当金は支給されません。
しかし、傷病手当金の方が金額的に多い場合、差額分が支給される場合があります。支給額の目安は、休業補償給付が給付基礎日額の80%、傷病手当金が給料の約3分の2です。
適応障害の原因が業務に関連するかどうかを見極め、適切な給付を選択しましょう。
国民健康保険に加入している場合
国民健康保険には傷病手当金制度がそもそも存在しません。
傷病手当金は全国健康保険協会や健康保険組合に加入している人が対象で、フリーランスや個人事業主で国民健康保険に加入している場合、原則受給できないでしょう。
特例として新型コロナウイルス感染時は支給対象となるケースもありますが、適応障害での受給は難しいのが現状です。
このため、自身の健康保険の種類を確認し、傷病手当金の対象かどうかを判断しましょう。
障害厚生年金か障害手当金を受給している場合
適応障害は原則的に障害年金の対象外ですが、例外的に受給している場合は傷病手当金はもらえません。
神経症と分類されるため、重症に見えても障害年金の認定対象外となる場合が基本です。何らかの理由で障害年金を受給できている場合、重複して傷病手当金を受けることはできないでしょう。
また、障害年金と傷病手当金の併給は認められていないため、注意が必要です。
適応障害で休職する場合に傷病手当金を申請する方法【5STEP】
傷病手当金の申請は、以下の流れで行います。
- 会社への相談
- 待機期間
- 書類の準備と記入
- 医師の診断と証明
- 書類の提出
受給を検討している方は、申請の流れを把握しておきましょう。
1.会社への相談
適応障害で休職する場合、まず会社の上司や人事部門に相談しましょう。
面談では、適応障害の診断結果と休職の必要性を説明し、傷病手当金の申請を希望している旨を伝えます。また、休職に関する手続きや必要な書類、今後の連絡方法、復職に向けての相談なども行うとスムーズです。
なお、休職制度の利用や傷病手当金を申請するにあたり、産業医との面談や受診を求められるケースもあります。会社から求められたことに対して真摯に対応するのも心がけてください。
2.待機期間
受給条件の一つ「連続する3日間の休職」は待機期間となっています。そのため、傷病手当金は4日目からが支給の対象です。なお、有給休暇や公休も待機期間に含まれます。
例えば、月曜日から水曜日まで連続して休んだ場合、木曜日から傷病手当金の支給対象になります。休日を含む場合、金曜日、土曜日(休日)、日曜日(休日)と連続して休むと、月曜日が支給対象です。
待機期間が過ぎないと書類の申請はできないため、注意してください。
3.書類の準備と記入
「健康保険傷病手当金支給申請書」に必要事項を記入します。申請書は、会社の人事部門から渡されることが一般的です。出社が難しい場合は、健康保険組合のWebサイトからダウンロードできます。
申請書には、本人記入欄・事業主記入欄・医師記入欄があり、該当箇所に必要事項をそれぞれ記入しなければなりません。
本人記入欄は、以下の情報を記載します。
- 被保険者情報
- 振込先指定講座
- 申請期間
- 傷病名
- 発病年月日
- 仕事の内容 など
記載方法は以下のページからも確認できます。
4.医師の診断と証明
適応障害で傷病手当金を申請する際、医師の診断と証明が求められます。適応障害による労務不能状態を医学的に証明する必要があるためです。
傷病手当金支給申請書の「療養担当者が意見を記入するところ」には、以下の内容を記載してもらいます。
- 労務不能と認めた期間
- 傷病名
- 初診日
- 発病または負傷の原因
- 発症年月日
- 主な症状や経過 など
通院先に提出し、記載してもらうようにしてください。
5.書類の提出
本人記入欄、医師記入欄の記載が確認できたら、書類を会社へ提出しましょう。事業主記入欄に必要事項を記載した後、会社経由で健康保険組合または協会けんぽに以下の書類が提出されます。
- 傷病手当金支給申請書(本人記入欄、事業主記入欄、医師記入欄を含む)
- 勤怠状況がわかる書類(タイムカードなど)
- 給与支払い状況がわかる書類(賃金台帳など)
記入済みの申請書を会社の担当部署(人事部門など)に提出します。その後、会社が健康保険組合または協会けんぽに書類一式を提出します。
記載内容に問題がなければ、書類提出から約1ヵ月〜2ヵ月で傷病手当金は支給されます。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
なお、傷病手当金の受給に関して詳しく知りたい方は「転職×退職のサポート窓口」まで、お気軽にご相談ください。
適応障害による休職で傷病手当金をもらう4つのメリット
適応障害で休職し、傷病手当金を受給するメリットは、主に以下の3つです。
- 治療に集中できる
- 休職中の収入確保につながる
- 治療費の一部を補填できる
- 休業は昇給や昇進に影響しない
それぞれのメリットをみていきましょう。
治療に集中できる
傷病手当金は治療費や生活費の補填に充てることができます。そのため、経済的な不安は軽減され、心身の健康を最優先にして療養に専念できるでしょう。
医師の指示に従って最適な治療を受けられる環境が整うため、回復の可能性は高まります。例えば、医師やカウンセラーとの定期的な面談に十分な時間を確保できたり、心身を休めるためのリフレッシュの時間に費やせたりします。
心身の回復を促進できる機会になるでしょう。
休職中の収入確保につながる
傷病手当金により休職中であっても収入があるため、安定した生活が保てます。傷病手当金では給与の一定割合の金額が保障され、最長1年6ヵ月の長期支給が可能です。傷病手当金の受給は、休職中の経済的不安の軽減につながります。
参考:令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます|厚生労働省
治療費の一部を補填できる
適応障害の治療にかかる期間は、1ヵ月〜6ヵ月が一般的です。傷病手当金は休職中の収入を確保するだけでなく、適応障害の治療にかかる費用の負担を軽減する役割も果たします。
例えば、以下のような治療に関する費用に補填できます。
- 精神科や心療内科の定期的な通院費用
- 処方される薬の費用
- カウンセリングやセラピーの費用
- ストレス軽減のためのリラクゼーション療法などの自己投資
傷病手当金を受給できれば、経済的な不安からくるストレスへの緩和にもつながるかもしれません。
適応障害による休職で傷病手当金をもらうデメリット
適応障害による休職で傷病手当金をもらうデメリットは以下の3つです。
- 会社側に適応障害であることが知られてしまう
- 失業保険は活用できない
- 社会保険料は免除されない
傷病手当金の受給には一定のリスクがともなうため、メリットとデメリットを天秤にかけて判断するのが大切です。
会社側に適応障害であることが知られてしまう
傷病手当金を申請する際には、医師の診断書か意見記入欄の記載が必要となるため、会社が病名を知る可能性があります。
また、休職時には理由を求められる場合が多く、病名や症状を説明せざるを得ないケースもあるでしょう。メンタルヘルスに関する情報が会社内に伝わることに抵抗を感じる人にとっては、心理的な負担になる可能性があります。
適応障害であるのを会社に知られるリスクを考慮し、受給するかを検討しましょう。
失業保険は活用できない
傷病手当金は「就労が不可能な状態」が前提であるのに対し、失業保険は「就労可能だが職に就いていない状態」が条件であるため併給できません。傷病手当金を受け取っている間は、たとえ退職していても失業手当の申請は不可能です。
また、退職後の経済的支援の選択肢が制限されるため、キャリアプランや生活設計に影響を及ぼす可能性があります。
なお、失業保険と傷病手当金の概要や注意点、どちらも受け取る方法に関しては以下の記事で解説しています。

社会保険料は免除されない
傷病手当金を受給している期間であっても、社会保険料の支払い義務は継続します。勤務先によっては会社が立替払いし、復職後にまとめて天引きされる場合もあります。経済的支援を受けながらも保険料の支払いが続くため、手元の資金に余裕がない場合はさらなる負担となるでしょう。
社会保険料の扱いを会社に確認し、経済的な見通しを立てることが重要です。
傷病手当金でもらえる金額
傷病手当金の支給額は、以下の計算式で求められます。
1日あたりの支給額 = (支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額) ÷ 30日 × 3分の2
なお、支給開始日は最初に傷病手当金が給付される日を表します。
また、健康保険への加入期間が12ヵ月に満たない場合、以下の2通りの内、低い金額が採用され計算が行われます。
- 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
- 標準報酬月額の平均値
引用:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
支給額は健康保険への加入期間や標準報酬月額の平均値を基に計算され、公平性を保つ仕組みとなっています。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
傷病手当金が支給される期間
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヵ月です。
途中で復職し1ヵ月間就労して事業主より給与を受け取っても、その1ヵ月間は支給期間にカウントされません。そのため、実際の支給日数が通算して1年6ヵ月(約548日)に達するまで受給可能です。
なお、支給開始日が法改正前の2020年7月1日以前の場合、従来通り「最長1年6ヵ月」のルールが適用となります
参考:令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます|厚生労働省
適応障害で休職する場合の3つの注意点
適応障害で休職する場合の注意点は以下の3つです。
- 医師の診断書を用意する
- 休職中も会社へ報告を行う必要がある
- 休職期間が満了しても復職できない場合は退職・解雇となる
適応障害での休職では、医師の診断や会社との連絡、休職期間の設定など、さまざまな点に配慮が必要です。
医師の診断書を用意する
心身の不調を感じたら心療内科や精神科を早期に受診し、診断書を取得するのが休職の第一歩です。
会社に休職を申請する際に診断書の提出を求められるのが一般的で、労災保険や傷病手当金の申請にも診断書は不可欠な書類です。
適応障害など精神疾患は外見で判断しづらいため、医師の診断が重要な証明となります。また、業務起因での発症を主張するには、診断書とともに業務内容との関連性が分かる資料も必要です。
適応障害の診断を受けたら、速やかに休職の手続きを進めましょう。
休職中も会社へ報告を行う必要がある
休職中は会社との雇用関係が継続しているため、体調の経過、治療状況、復職の見通しなどを定期的に報告する義務があります。
報告の頻度や方法は、会社ごとの就業規則や担当者の指示に従いましょう。休職期間中の行動が就業規則に抵触する可能性があるため、療養に専念する姿勢が求められます。旅行や外出が回復に役立つ場合でも、医師の指示にしたがって行動するのが望ましいでしょう。
また、会社との連絡は、精神的負担を軽減するために労務担当者がメールで行うなどの配慮がされるケースもあります。
会社との適切なコミュニケーションを心がけ、誠実な対応を心がけましょう。
休職期間が満了しても復職できない場合は退職・解雇となる
休職期間満了時に復職が不可能な場合は、自然退職または解雇となるのが通常の扱いです。
自然退職となるのは、労働者側の都合で復職できないと判断された場合です。解雇となるのは、会社側が一方的に労働契約を終了させる場合で、正当な理由が必要とされます。
また、精神疾患による復職可否は判断が難しく、労働者と会社の見解が分かれる場合は法的トラブルに発展するケースも考えられるでしょう。
適応障害での解雇に納得できない場合は、弁護士に相談し、解雇の無効や撤回を主張できるケースがあります。
なお、一度復職しても再発した場合は、同一疾患として前回の休職期間が控除される可能性があるため、休職可能期間に注意が必要です。
適応障害の場合は傷病手当金と労災どちらを申請すればいいですか?
適応障害で休業した場合の傷病手当金の扱いに関するよくある質問をご紹介します。
- 適応障害で休職した場合に給与は支払われますか?
- 休職中の社会保険料はどうなりますか?
- 適応障害の場合は傷病手当金と労災どちらを申請すればいいですか?
傷病手当金の受給に関する疑問を解消し、スムーズな申請につなげましょう。
傷病手当金の受給について相談するなら「転職×退職のサポート窓口」がおすすめ!
適応障害で休職する場合、傷病手当金の申請・受給が可能です。しかし、書類を申請するにあたって、業務外の病気や怪我により就業が困難であること、連続した休職期間が3日以上あることなどの受給条件を満たす必要があります。
また、書類は本人記入欄・事業主記入欄・医師記入欄があり、かかりつけ医師に診断内容の記載を依頼しなければなりません。このように、傷病手当金の支給を受けるためにはいくつかのステップを踏む必要があります。
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